ウィリアム・ワイラーが、製作者サミュエル・ゴールドウィンのもとで、1941年に監督した悪女ドラマ。原作はリリアン・ヘルマン作の舞台劇で映画のための脚色もリリアン・ヘルマン。撮影監督はグレッグ・トーランド、音楽メレディス・ウィルソン。ベティ・デイヴィス、テレサ・ライト、ハーバート・マーシャルが主演し、ほかにリチャード・カルソン、パトリシア・コリンジ、ダン・デュリエ、チャールズ・ディングル、カール・ベントン・リード、ジェシー・グレイスンなどが出演する。
偽りの花園 (1941) : The Little Foxesのストーリー
20世紀初頭、米国南部の小さな町。富裕な銀行主ホレイス・ギデンス(ハーバート・マーシャル)はながく心臓を患いボルティモアで入院療養中だった。妻レジナ(ベティ・デイヴィス)は夫を見舞いもせぬ冷たい性格の女、近くに住むレジナの兄ベンとオスカーは儲かることなら何でもしかねぬ連中で、南部の安い労働賃金を餌に東部商人と結び、この町に綿工場を建設しようと画策していた。この計画に出資を勧誘されたレジナは、投資負担額7万5千ドルを夫から出させようと、娘アレグザンドラ(テレサ・ライト)をボルティモアにやって夫を連れ帰らせた。衰弱の烈しい身で帰ってきたホレイスは悪らつなレジナの兄たちを嫌って出資を拒んだ。
オスカーはギデンス家の財産目当てに息子のリオをアレグザンドラと結婚させたく思い、利害を共にするレジナも反対しかねていたが、アレグザンドラには新聞記者デイヴィッド・ヒュウィットという恋人がいた。ホレイスの銀行に勤めるリオから、銀行の金庫にホレイスが9万ドルの債券をしまいこんだままになっていると聞いたオスカーは、リオを使ってそのうち7万5千ドルを盗み出させた。ある日、金庫に入れておいた遺言状を直そうとして銀行に行き、債券の紛失を知ったホレイスはすべてを察した。そしてレジナに遺産は全部アレグザンドラにゆずるように遺言状を直すと言い渡した直後、はげしい発作に襲われた。
ホレイスは、2階から鎮静剤をとってきてくれとレジナにたのんだが、彼女は黙殺した。ホレイスが自分でとりに行こうとして階段の上で昏倒したとき、レジナははじめて大声をあげて人を呼び手当てをした。が、ホレイスはそのまま死んで行った。彼が死ぬと、レジナはすぐ兄たちに債券を盗んだことを非難し、それをたてに暴利をむさぼろうとした。そんな母の態度を見て、アレグザンドラの清純な心は耐えられなかった。彼女は母をすててデイヴィッドの許にはしった。窓のかげから彼女を見送るレジナの眼には、子供からさえも背かれた、寂しい涙が浮んでいた。